インプラントオーバーデンチャーの応力分布解析とインプラント埋入位置・本数の影響
総義歯
総義歯は、上顎または下顎の歯をすべて失ってしまった患者(無歯顎患者)に対する治療法の一つです。
無歯顎者の咀嚼機能を回復するために、口の中へ入れる人工の義歯を指します。
総義歯[1]
インプラントオーバーデンチャー
顎骨に歯科インプラントを2〜4本程度埋入し、その埋入したインプラントを支持装置として、義歯を固定する治療法をインプラントオーバーデンチャーといいます。
インプラントオーバーデンチャーの義歯部分はインプラントから取り外しが可能になっており、メンテナンスが容易です。
インプラントオーバーデンチャーの構造[2]
しかし、インプラントオーバーデンチャーは少ない本数のインプラントで支持するため、1本でもトラブルが起こると義歯が使えなくなり、咬合不良を招く欠点が存在します。 そのため、インプラント埋入の際には患者に適したインプラントの種類・埋入位置・本数の設定が求められます。
インプラントの埋入位置
現在、インプラントオーバーデンチャーのインプラントの埋入位置設定は未だ議論の余地があり、特に上顎については
前後的に広く多角的に配置するよう指針が設定されています[3]が、力学的根拠に乏しいというのが現状です。
実際に埋入位置を決定する際には、歯科医の経験や臨床に基づいて設定されています。
上顎インプラントオーバーデンチャー
のインプラント埋入例[4]
リバースエンジニアリング
本研究では、複雑な形状である顎骨の3次元モデルの作製法として、リバースエンジニアリングを用いました。
リバースエンジニアリングとは、実際に存在する物体の形状をデータとして取り込み、
それを基に3次元モデルを作製する手法です。
本研究ではこの手法にて作製したモデルを用いて、応力解析を行いました。
本研究における応力解析の必要性
上で述べましたようにインプラントオーバーデンチャーにおいて、どのような埋入条件が患者に対して負担が少ないかは議論の余地があります。
現在、インプラントの埋入位置・本数は医師の経験・臨床に基づいて選択されています。
本研究では、複数の無歯顎症例においてインプラントの埋入位置・本数を設定、埋入した3Dモデルを作製しました。
このモデルを用いて応力解析を行い、各条件下で上顎及び上部構造に生じる応力分布の影響を評価することで、適切な埋入位置・本数の設定を可能とすることを目的としています。
目的
インプラントオーバーデンチャーにおける支持インプラント埋入位置・
本数が応力分布に与える影響について応力解析を行い、
埋入位置・本数と応力分布の関係や最適なインプラント埋入条件を評価します。
スライド
[1]ひかり歯科クリニック
http://www.gerontogical-dental.com/esthetic/full-dentures
[2]たかやまデンタルクリニック
http://www.katayama-dental.com/14399052915864
[3]口腔インプラント治療指針2020
https://www.shika-implant.org/publication/dl/2020_guide.pdf
[4]知っておくべきインプラントオーバーデンチャー これからのスタンダード
https://www.shien.co.jp/book/sample/s3/8124.pdf